- 2008-04-10 (木)
第2弾は、広島カープである。
僕とカープ
いきなり余談だが、僕は広島カープ初優勝の日に広島市でこの世に生を受け(ああ歳がバレる)た関係で、幼少の頃より「カープっ子」として育てられた。が、中学以降広島を離れると、多感な時期に寮制の男子校だったことも手伝って、思春期と反抗期に鬱屈したモノは女の子ではなくプロ野球に向けられ、早々にカープファンをやめてしまった。理由は「カープが強かったから」。若気の至りとしか言いようがない。あれから歳を重ね、20年ぶりくらいに広島に戻ってきたが、やはりカープファンになる気がしない。理由は後述する。まぁ、特定のチームのファンになる気など、もはやないのだけれど。
カープはビンボーか?
結論から言おう。カープはビンボーではない。「カープはビンボーじゃけえ」と言う人は、球団の戦略に引っ掛かって、そう思わされているだけである。金本や新井や黒田がFAで出て行ったのは、彼らのそれ以降の野球人生において、プラスに働く要素がカープになかったからである。それはゼニだけの問題ではなく、野球をする環境すべてを含んでいる。前田や緒方が出ていかなかったのは、彼らがケガがちで他球団から良い評価をもらえなかったからに他ならない。更に、FAで国内移籍した場合は、移籍先球団から保証金がカープ球団に入るはずだが、その金はどこに使われているのか、カープビンボー説を唱える人は考えたことがあるだろうか。
憶測で論じる前に、まずは地元中国新聞のこの記事を見て頂きたい。
カープ、決算は33年連続黒字
広島東洋カープは24日、広島市中区のホテルで株主総会を開き、2007年決算を承認した。売上高は62億900万円。当期利益は1700万円。 1975年から33年連続の黒字となった。10年連続Bクラスという長い低迷に加え、テレビ放映権料が巨人戦の全国中継の減少などで前年比で2億2100 万円の大幅減。逆風の中にあって、売上高は同5億2900万円の増収となった。
前田智徳外野手の2000安打達成や雨天中止(4試合)が少なかったことで、主催試合の入場者数が7年ぶりに110万人を突破したことがもたらした。入場料収入は前年比で2億9000万円増の22億4000万円。キャラクターグッズの収入も同2億3600万円増の7億円と大きく伸ばし、放映権料の減収分もカバーした。
(中国新聞 2008/03/25)
カープ球団が徹底的に支出を抑えることで、毎年黒字決算していることは有名な話である。記事から、昨年は前田の2000本安打という特需(2億9000万円増)により、放映権料のマイナス(2億2100万円減)をカバーしたと読み取れる。当然、その他にFA補償金(人的補償で赤松が入団したとはいえ、かなりの補償金があるはず)も収入に含まれるはずなので、大きな補強もしていないのだから、単純に考えればキャッシュフローをケチれば黒字は当然の結果である。
ファンを惹き付ける球団とは
だが、何十期黒字を続けようとも、黒字経営は球団の都合に過ぎない。数少ない黒字球団だから、カープファンになりましたなんて言う人は、まさかいないだろう。球場に足繁く通うファンはもちろん、これから球場に足を運んでみようと思うファン(つまり、TV中継しか見ないファンを除く)にとって重要なのは、球団が黒か赤かではなく、見物料の対価としてどのようなエンターテインメントを提供してくれるかである。パ・リーグの球団、とりわけマリーンズなどは、この辺に敏感で、千葉マリンスタジアムに行けば、試合の勝敗に関わらず、何かしらのイベントを行っていて楽しいし、ついでにマリーンズが勝てばさらに楽しいとファンに思わせる仕掛け作りに余念がない。マリーンズの魅力は、よく報道されるいわゆる「マリーンズサポーター」の熱狂的な応援だけではない。
もはや有名だが、知らない人のためにマリーンズのエンターテインメントを列挙しよう。「福浦デー」だの「ベニーのハワイアンデー」だの「マーくん(マスコット)の誕生日」だのと、とにかく毎日イベントを企画している。球場の周囲には展示場、グッズショップ、ステージ、おしゃれな屋台などが所狭しと並ぶ。洗練されたチアリーダーのおねえさんたちやマーくんのぬいぐるみが、年齢を問わないファンをお出迎え。球場外で子どもをリリーフカーに乗せるサービスをしている。送迎バスのマリーンズラッピングのデザインは、ダサさが微塵もない。ひとたび球場に入れば、ぬいぐるみのマーくんは観客席を渡り歩いてファンと触れ合い、チアリーダーのおねえさんを観客席内に配置している。バックネット裏の一部を除く内野2階席の全てを自由席にしている。テーブル形式の家族シート、カクテルバー、打ち上げ花火など、試合の勝敗とは関係なく楽しめる「ボールパーク」となるべく、年々(もしかしたら日々)試行錯誤をし続けている。千葉マリンスタジアムは、千葉市街地から離れたJR海浜幕張駅から、さらに徒歩20分ほどと、立地は決して良くない。それにも関わらず、老若男女問わず自然と足を向けたくなる球団側の仕込みには、枚挙にいとまがない。
また、1995年以降のマリーンズのユニフォームのデザインも、ファンを惹き付ける大きなポイントだと僕は思う。袖の小さな刺繍以外に、親会社「LOTTE」のロゴが入っていない。さらに、フランチャイズの「CHIBA」が大きく入っているわけでもない。親会社の広告塔でもなく、かといって名ばかりの町興しの道具になるわけでもなく、常に洗練されたデザインのユニフォームは、マリーンズに興味を持ったばかりの人にも受け入れやすいものである。多くのファンは、親会社ロッテが好きだからファンになるわけではないし、千葉以外に在住のファンは、千葉が好きだからファンになったわけではないのだ。更に、千葉の子どもたちが、かつての暗黒オリオンズ時代を全く意識することなく、「カッコいいもの」として自然に受け入れ、マリーンズの帽子やレプリカユニフォームをまとっているのも印象的だ。「行きたくない球団は大洋とロッテ」と小学生時代の作文に書いた、バファローズの古木の「トリビア」があまりにも有名だが、少し前まで「ロッテ(オリオンズ時代から初期マリーンズ)」は、小学生が嫌うダサくて弱い球団の代表格だったのだ。
これらの改革を行うためには当然、スポーツビジネスとしての莫大な投資がかかるためだろう、球団は大きな赤字経営である。しかし、千葉市民だけでなく多くのファンの支持を得ているため、その赤字は年々減ってきているという。マリーンズ球団がビジネスとしての投資を行った結果が出るのは、もう少し先になるかもしれないが、少なくともファンの裾野を広げ、新たなファンを獲得し、ファンに受け入れられ、支持されているという点では、常にファンと向き合った経営をしているといえよう。
振り返ってカープはどうか。これはセ・リーグの球団全般に言えるが、ジャイアンツ戦のTV中継放映権にぶら下がる体制に長年漬かっていたためか、球場に通ってくれるファンの裾野を広げるための努力を全くしていない。球場に行ったら、せいぜいどこの球団にもあるような紋切り型のグッズを購入し、あとは試合を見る(外野なら応援もする)だけで、もしその試合が一方的なつまらないものだったら、安くはない金を払って来場したファンのやり場は、もはや高価な球場内販売ビールくらいしかない。だから、特に熱心なファンでもなければ、年に1回でも話のネタに観戦すればもういいや、となる。特に、一般的なカープファンには、この傾向が顕著である。
この場合、「一般的なカープファン」とは、単に広島市民であるか昭和50年代のカープが好きだっただけで、自称カープファンだが市民球場に通うほどでもない人たちを指す。恐らく、このレベルのファン、つまりカープ球団からみれば球場のリピータになってくれる可能性がある潜在的ファンが、カープファンを自称する人たちの8割以上を占めると思われる。これらの一般的なのファンの足を球場に向けさせる努力をほとんどしていないことは、上記のマリーンズの例と現在のカープを比較すれば明らかだろう。
球団はファンをバカにしていないか
もはやカープが強豪球団のファームであることは周知の事実であるが、それは「カープは金がないけえ」ではない。一言でいえば、「カルテルへの甘え経営」のツケである。当然だが、広島にはプロ野球球団は一つしかないので競合はない。そして、2004年のパ・リーグのようなことがない限り、新規参入はあり得ないし、セ・リーグ6球団の枠組みが崩れることもない。そのようなカルテル体制への甘えが、カープ球団をダメな方向へと導いているのである。赤字を出さない経営を身上とし、「支出を絞って小さい規模で経営」→「選手がFA流出」→「FA補償金と放映権収入」→「入場者数そこそこでも黒字決算」→「放映権料縮小」→「更に支出削減」→「更に選手がFA流出」→「補償金等でまた黒字」・・・という、一見黒字でもとんでもない負のスパイラルが成立している。
それでもカープファンを続けられるのは、熱心なファンと言えば聞こえはいいが、実のところは、金本や新井や書ききれんくらいの選手の流出に慣れて、もはや感覚が麻痺し、「カープはビンボーじゃけえ」といって耐え忍ぶことにマゾヒスティックな快感すら覚えるようなファンだけである。そういうファンに限って、カープ以外の球団、特にパ・リーグがどんなエンターテインメントを提供しているか知らないから、「ワシらが応援せにゃあ」と妙な責任感を持って市民球場に足繁く通い、スター不在に等しい今年も熱心に応援している。それはそれで満足してるのだろうから結構だが、それこそが、球団の思うツボなのではないかと僕は思うのだ。
カープ球団の詳細な財務状況は知らないが、仮に、選手のFA流出を引き留めるキャッシュが不足しているために、選手を放出しなければならなくなったとしよう。この状況での球団の役目は、ファンを選手のFA流出に慣れさせて、ファンの負のパワーをジャイアンツやタイガースに向けさせて球場に足を運んでもらうことでは決してない。そんなマゾは少数派だ。そうではなく、球団の役目は単純に、どうすれば流出を阻止することができるのかを、真面目に考えることである。キャッシュが不足しているのなら、当然、営業キャッシュフローを増やさなければならない。従って、入場料その他で大幅な収益を上げられるように、新たなファンを開拓して、彼らを惹き付け、リピータになってもらうための大改革と、それに伴う赤字覚悟の投資を、どこかで行う必要があるのだ。ファンの立場に立った大胆な改革を行った結果、万一、多少の赤字を計上したとして、ファンが離れていくだろうか。
もう一度言う。プロ野球界というカルテル体制の中にありながら、ファンを惹きつけるための大きな投資や大胆な改革をしない。30年以上続く黒字経営継続を身上に、足繁く通ってくれる一部の通好みというかマゾヒストなファンに支えられて、小さな経営を行う。そういう方針としか考えられない今のカープは、カルテルに甘えて内部事情ばかりを考え、球団は公共財だとかなんとか口では言いながら、ファンと向き合っているとはとても言えない。むしろファンをバカにしてる。これが、僕がカープファンになれない理由である。
(つづく)
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Comment:1
- Masuo 2008-08-31 (日) 10:13
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はじめまして。通りすがりのものです(どこのファンでもないですが)。
拝読させて頂いて、うなづけるところがありました。
千葉ロッテのエンターテインメントは、見ていてもすごく有名ですよね。とても面白い営業戦略だと思います。
先日は、福岡のホークスタウンに行ってきました。野球だけではなく、アウトレットとしても、ホテルリゾートとしても、立派でした。
アンチ層や興味の無い人をいかに惹きつけるか。その仕掛けが、見事でした。野球臭さを感じさせない、気軽に入りやすい雰囲気を醸し出すことも、大切なんでしょうね。
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