- 2008-03-06 (木)
- プロ野球を10倍つまらなく見る方法
あまり調べてはいないが、ジェレミー・パウエル投手の二重契約問題は、きっとずいぶんとネット上でも議論されているんだろう。報道されているだけの情報をあつめて、僕のような一般ピーポーが一体どれくらいの分析を加えられるのかは分からないが、一つだけ納得のいかないことがある。「ソフトバンクは、なぜオリックスに連絡して確認を取らずにパウエル獲得に動いたのか」である。
この問題は、実は単純でいて釈然としないが、鍵はソフトバンク竹内COOの以下の発言にありそうである。
「日本では統一契約書が正式な所属を決定づける文書。営業、経営面と違い、勝つための編成案件はすべて競争。われわれはカルテル集団ではない」
上記の「カルテル発言」を掲載しているのが、数あるスポーツ新聞の中でもソフトバンクの地元の西日本スポーツであり、記事の題名も「パウエル横取り ホークス オリと遺恨ぼっ発!!」という、とても地元紙とは思えないものであることも興味深いが、今回はそれについては深くツッコまない。
ここでちょっと余談。僕はソフトバンクの携帯を使用している。賛否両論あれど(否の方が多い気もする)固定概念や既存のパラダイムをぶち壊して、元公社系や第二電電系の携帯キャリアに立ち向かっていくソフトバンクの企業姿勢は、細かいことを抜きにすれば僕は好意的にみている。ホワイトプランが実は大して安くないとか、割賦縛りがキツイくせに0円表示してるとか、そういうプロセスの怪は百も承知だが、結果としてドコモやauが追従してプランや販売方法を抜本的に見直しているところを見ると、Vodafoneのような外資企業でも成しえなかったことをしているのは確かである。同じことはソフトバンクのADSL事業にも言え、ISDNの次は光ファイバという計画を着々と進めていたNTTに立ち向かい、NTTの戦略を変えさせたのもソフトバンクである(モデムレンタル制度の怪しさ云々は略)。
閑話休題、今回の二重契約問題に関しても、既存の馴れ合い体制に一石を投じたという見方ができる。江川事件と同じく、弁護士であるコミッショナーも気づかぬ抜け穴が野球協約等々にあったというわけだ。だが、通信キャリアとして確固たる地位を築いたソフトバンクが、オリックスに対してなぜ電話の一本、メールの一通を出せなかったのか。その答えは、前述の竹内COOのカルテル発言にあると思う。つまり、彼等はプロ野球の球団という「事業」を、ADSL事業や携帯キャリア事業と同様に、既存の妖怪どもを退治して新しいパラダイムを創出すべく進めていこうと考えており、「ソフトバンク球団はカルテルではない」=「パの他球団はカルテルであり、それには加わらない」と言い張っているのである。
プロ野球がカルテルであるかどうか、またその是非に関する議論は、非常に複雑困難であるが、これについて僕は一つだけ思い当たることがあった。それは、読売ジャイアンツの渡邉恒雄会長がその昔、長嶋監督の頃に大補強をした際、「資本主義だから、ビンボーなYsやCはパ・リーグに行け」というような趣旨の発言があったことである。僕はアンチGでも何でもないが、プロ野球という特殊な市場の中で、現実の自由競争主義と同じ考え方を持ち込もうとしていることに妙な違和感を覚えた記憶がある。今回の竹内COOの発言も、そう考えれば同類のものとして受け取れないか。もう一度問おう。新規参入に大きな壁を設けているプロ野球は、本当に自由競争主義であるべきなのか?
この件については、連盟や高野連、ドラフト制度などを絡めると書ききれないので、本当は僕なりの意見があるのだが、別の機会に譲ろう。ともかく、自由競争とは言い切れない箱庭の世界において、現実の自由競争主義を持ち出し、カルテルじゃないからと言って、つまらんトラブル回避のための電話一本も掛けない。昨年未勝利のパウエルがそこまでして欲しかったのか。ソフトバンクのその後の戦略は、いろんな意味で巧妙かつ素晴らしい。会見における通訳の根回しから始まり、パウエルをキャンプに呼んだり、神様である王監督と面会しているところを全国放送で垂れ流し、結果、コミッショナーを巻き込んで全面勝利という格好になった。パウエルの言い分を真に受ければオリックスの不手際も多々あるだろうが、対するオリックスはそれを指をくわえて見ているしかなく、ドン宮内がお出ましになるわけでもなく、かといって中村勝広本部長が阪神監督時代よろしく燃える男になるわけでもなく、大恥をかいただけである。
ファンの立場からは、この件をどう受け止めるのだろうか。オリックスファンとしては、来たくないと言ってる外人にムリに来てもらうこともなく、デイビーが昨年比二倍、馬車馬のように頑張るだろうから、むしろパウエルをソフトバンクに突き返すくらいでいいだろうが、ソフトバンクファンの受け止め方は想像できない。そもそも、ガトームソン、スタンドリッジと先発完投型2桁勝利級の外人ピッチャーが在籍しているのに、さらにパウエルっていうのがよく分からないんですが。まぁ、「五輪に3人以上選手を派遣したチームは外国人枠臨時拡大」とかいう制度の活用をしたたかに睨んでるのかもしれないし、何よりカズミ今季絶望の環境下で王監督の花道を飾るためには、手段を選べないってコトかな。うん、きっとそうだ。くすぶってる若手ピッチャーもいるだろうに、神様が監督だとメンドクサイですな。
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