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ある不信の物語

WWW経由の通信販売は、楽天などの例を出すまでもなく、我々の生活に定着している。我々が数多のネットショップの中から1店舗を選び出す基準は、大まかに2つに収斂されよう。一つは、価格.comの成功に見られるように価格の安さ(送料込みで!)、もう一つは百貨店のようなブランド力や実店舗利用経験などから築かれる、その店の主観的な信用である。単純に考えれば、この二つを高次元で両立させている店が、ネット上で成功しているのではないか。さて、ここで問題。実店舗を利用して良い印象を持ち、その店が運営するネットショップで手頃な値段で欲しい商品が陳列されていたら、あなたならどうするだろうか、というお話。

初めてパソコンを自作したのは、かれこれ8年も前、僕がまだ東京在住の大学院生だったころのことだ。当初、自作と言えば、アイボリーの地味な色のケースにわけのわからないパーツを詰め込むマニア仕様だとばかり思っていた。が、高校時代からの友人(自作マニア)に連れられて行った秋葉原のFaithで出会った星野金属(当時)のJAZZ LVに一目惚れ。大胆に斜めに削られた前衛的なフロントマスクと、シルバー総アルミに前面アクリル張りというスタイルは、それまでの僕の自作イメージを吹き飛ばすのに充分だった。なけなしの金をはたいて当時は高価だったアルミケースであるJAZZ LVを手に入れ、友人の薦めのままにPioneerのスロットインDVDドライブやらMatrox Millenium G400(G400がいかにマニアパーツなのかを知ったのは、ずっと後のことだった)やらを買ったのは、すべてFaithだった。それからというもの、秋葉原にパーツを漁りに行くときは、他店とは少し離れた場所にあるFaithにも必ず足を運び、今から考えれば実にくだらないパーツを調達したものだ。

さて、最近、「リビングでインターネットしたい」という母の要望に応えるべく、DELLの直販でInspiron 1526を購入した。WXGA液晶、Athlon64 X2 TK-57 1.9GHz搭載ノートで7万円を切るという、Athlon64 X2 3800+のCPUを数年前に4万円弱で買って「ヤッスーイ」などと言っていた自分が悲しくなるようなスペック/価格である。本機にはオプションのBluetoothを積んでおいたので、それを活かすべくBluetoothマウスを購入することにした。ネットを漁ってもなかなか良いものが見当たらない中で、僕の要望を満たす日本未発売のLogitech V470に行き当たった。このマウスを輸入販売している店を探しているうちに、手ごろな値段で売っているお店を一つ見つけた。それが、前述のFaithだったのである。

Faithには昔からよく通っていたし、店員も親切だった。僕は今、東京を離れているのでネットで注文するしかない。Faithでの通販は初めてで、納期5-10日ではあったが、送料は高くても送料込みでも値段も他店と比べて手ごろだし、ということで迷うことなくポチる。それで支払いをカードで済ませたのが先週初頭のお話。で、自動返信で来た「ご注文内容の確認」なるメールの一部が、若干気にはなるものではあった。

※受注承諾メールではございません。

つまるところ、注文は受けたけど受注はしてませんよっていう禅問答みたいな状態か。まぁしかし、Webシステムにおける注文のタイムラグと在庫(店舗在庫は無いはずだが)との関係でこう謳っているだけで、すぐに受注承諾メールが来るものだろうと思い、特に気にはしなかった。これまでのネット通販は皆そうだったし、何せ僕が自作を始めてからずっとお世話になってたFaithである。しかし、まる1週間以上たっても「ご注文内容の確認」以降のメールは来ず。何なんだ、僕の注文は受注されてないのか、と思うわけだ。

とりあえず、ネットで注文したものだから、ネットで問い合わせようということで、FaithのWebサイトのフォームから質問。投稿ボタンを押すと、「ただ今メールが込み合っており、返答に時間がかかります」みたいな表示が。ついでに納品書もお願いしようと、納品書請求フォームから申し込むも、また同じ表示。心配なので、ついに電話で問い合わせることにした。が、日中で定休日でないにもかかわらず、何回かけても電話は呼び出し中のままなのである。ここでやっと、これはマズイと気付き、価格.comのFaithの評価を見て更にビックリ。この手の投稿は主観が入り混じり、少数意見ならば商品の初期不良やクレーマー的視点で悪評価になる場合もあるが、現時点で70件ある投稿の半数以上が悪評価なのは如何なものか。

その後、時間を見つけては電話をかけていると、やっと繋がる。経緯を聞くと、受注はされているらしく、2月29日に問屋かどこかに発注したという。今週末か来週頭には発送するらしい。何故、注文から数日経った29日に正式受注もせずに問屋発注なのかという素朴なギモンは残ったが、とりあえず、Faithが僕の注文を正式受注したことと、納期はいつになるのかを改めてメールで知らせてくれ、との旨を伝え、その場は電話を切った。それにしても、「受注承諾メールではない」というメール以来、1週間以上連絡をもらっていないのに、お店側は勝手に受注しており、問屋に発注をかけてるとは、いったいどういう見識なんだろうか。

電話を切ってから、改めて考えた。数年前、秋葉原のPC-Successが夜逃げしたことを思い出した。もともとネットでは悪名高いショップで、在庫や納入のあてもなく自転車操業で店舗運営していたという話だった。今回のFaithのケースは、PC-Successと何が違うのか?実は同じなのではないか?だけど、そうだとしたら僕が東京にいた頃によく通っていたFaithの店舗は何だったんだ?どうも心が晴れなかったので、もう一度電話して問い合わせてみることにした。

今度は一発で電話が繋がる。これまで書いた、僕とFaithとの関わりも交えながら、正式受注もないまま発注しましただなんて、一体御社の運営はどうなっているのか、代金だけ先払いで、モノはきちんと届くのかと。しかし、どうにもまともな答えが得られず、電話の向こうからは誠意が感じられなかったため、結局、注文キャンセルと相成った。(余談だが、カード支払の注文をキャンセルしたのだが、この体たらくではFaithがきちんとカード会社に対してキャンセルの処理を行っているのか、来月のカード明細が見ものである。もう電話したくないんだけどね。)

僕が言いたいのは、Faithはサイテーな店だから皆さんも利用しないほうがいいですよ、みたいな、価格.com評価のようなお話ではない。単なるネット通販のトラブルとしては、今回の件は実にささいなことであり、もっと複雑なトラブルに巻き込まれた人は大勢いるだろう。それより、老舗パーツショップであり、何より僕が店舗によく足を運んでいて、親切な店員がいる店頭をよく知っているあのFaithに裏切られたことによる、実店舗利用経験を通した(主観的な)信用の崩壊が切ないのだ。それでなくても現在の秋葉原は、萌えだかメイドだか何だか知らんが、そーゆーものが表に出て繁盛し、秋葉原の屋台骨を支えている一方、裏通りに追いやられていくパーツショップは経営難らしく、僕がよく通っていたOVERTOPや高速電脳が店をたたむなどしている。そんな中で、少なくとも僕にとっては信頼できるパーツショップであったFaithがこの体たらくなのだ。こうしたことの積み重ねで、パーツショップが衰退し萌えが拡大して、秋葉原の陣取り地図は書き変わっていったのだろうか。まぁ、萌えがどっち向こうが僕の知ったことではないが、僕は金輪際、上京してもFaithに足を運ぶことはないだろう。不信とはそういうものだ。

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